【工法別】家の傾き修理の費用と注意点

家の傾きを修理したいとき、どのくらいの費用がかかるのかを知ること、依頼時の注意点などを確認することが大切です。

知らず知らずのうちに家が傾いていると起こる影響や傾きを調べる方法を知っておけば、どんな方法で家の傾きを修理すればいいのかが見えてきます。

安全に生活するために必要な家の傾き対策についてご紹介していきましょう。

家の傾きによる影響

長年住んできた家であっても、度重なる地震の影響で地盤がゆるむことや、基礎部分の弱さから傾きが発覚するケースは珍しくありません。

「このくらいは大丈夫だろう」と安易な考えのまま傾き問題を放置してしまうと、さまざまな影響がでてきます。

修理の前にまず、どんな影響がでてくるのか具体的にみていきましょう。

1 住まいへの影響

家が傾いているかも、と疑ってほしい事例には次のようなものがあります。

【室内】

○引き戸や窓の開閉がきつい
○鍵をかける際にフィットしない
○ドアが勝手に開閉してしまう
○床にこぼれた液状のものがある方向に流れていく
○球状のものを床に置くと転がる
○一部の床面が壁から離れ、隙間が大きくなっている
○お風呂などの目地部分に亀裂がある

【室外】

○外壁にひびがある
○家の周囲の地面に水たまりができる箇所がある
○家の周囲は舗装しているはずなのに亀裂がある

これらの症状の原因となるものには、地盤の液状化、水道管からの水漏れ、湿気などによる木造部分の腐敗、シロアリなどがあります。

周辺に河川などがあるなどの環境が絡んでくるもこともあるでしょう。

現実的には100%水平な場所に家が建つことはありません。勾配の傾斜によっては問題があるかどうかは専門の業者による調査や診断が不可欠です。

2 人への影響

日本建築学会では、家の傾きによって起こる健康への影響度をホームページ上で掲載しています。

たった5mmの傾きでも人は傾斜していることを感じるほど平衡感覚が敏感です。

家の傾きが10mm以上になって大きくなれば、めまい・頭痛・吐き気・食欲不振・疲労感・睡眠障害などを誘発していきます。

水平復元工事を検討しなければいけないラインは10mmとされていますので、健康被害が起こる前に対策を検討するべきでしょう。

また、こうした身体的な問題の他にも精神面での不安が問題になることもあります。

「これ以上傾いたら…」「修理費用が莫大だったら…」と考え込んでしまうこともあるでしょう。まずは、自分でできる傾き調査をしてみましょう。

自分で家の傾きを調べる方法

家の傾きを調査するには、水平器を使用して勾配の大きさを調べる必要があります。

住宅の品質確保の促進に関する法律“品格法”では、勾配の大きさから家や土地にあってしかるべき基準が備わっているかどうかを見る基準があります。

しかし、これらの基準は地盤状態や家の構造、環境などによって変化するため、素人目で判断を下すのが難しいのです。

そこで今回は、水平器を購入しなくても家の傾きを調べられる方法をお伝えしていきます。

(1)ビー玉を使って調べる

住まいへの影響の部分でもお話しましたが、傾きを知るための“球状のものを床に置く”という手法には、ビー玉が最適です。

床においたビー玉の転がる方向や速度で大まかな判断をすることができます。

【リフォームなどの必要性がない】

○ビー玉は転がるがすぐ止まる
○ビー玉の転がる速度が低速である

【リフォーム会社への相談検討】

○ビー玉の転がり方が早い
○風、床の凹凸、滑りやすさに影響されることなく転がる

【リフォーム会社へすぐに連絡】

○1つの部屋だけでなく他の部屋でも同方向にビー玉が転がる

家自体が古くても、ビー玉が転がることが少なければ安心していいでしょう。

しかし、ビー玉の速度が速すぎる、どこで転がしても同一方向へ向かっていく場合には家や人に影響がでてきます。早めに調査してもらうことをおすすめします。

(2)ペットボトルと水を使って調べる

水平器の代わりになるのがペットボトルです。

ペットボトルに水を1/3程度入れ、傾斜を確認したい場所に横向きに設置します。水の揺れが落ちつくまで待ち、なるべくペットボトル内の水に目線を合わせてチェックします。(近すぎないようにしてください。)

明らかに水に傾きがみられるときには、家の傾きの修理を検討した方がよいでしょう。正確性には欠けるものがありますが、自分が感じる傾きを他の手段で確認するなら十分です。

一方方向に水が偏っている場合には、専門業者へ問い合わせてみましょう。

(3)アプリで調べる

実は今、床の傾きをスマホアプリで調べられるのをご存知でしょうか。

○床にスマホを置くだけ(角度傾斜計)(傾きチェッカーPRO)
○さまざまなものを測定(万能測定器+LEDライト)(Smart Tools-ツールボックス)
○自分からの距離や角度が測れる(Telemeter)
○コンパスが併せもつ機能iPhone(水準器)

中には有料のものも何点かありますが、比較的安価ですのでぜひ入手してみてください。

家の傾きは、中古住宅であれば1,000mm(1m)につき6mm、角度表記:0.34度が傾きの許容範囲とされています。

それ以上の値が出る場合にはプロに相談し、今後の対策をじっくり考えていきましょう。

 

修理費用の目安と注意点

家の傾きを修理する方法には、さまざまな方法があります。

直せる傾きの大きさ、基礎、費用、工事期間、修理後の強度などを確認して、最適なものを専門家と相談しながら決めていきましょう。

(1)プッシュアップ工法

プッシュアップ工法は、すでに地盤が沈下しきった状態に適した修理方法です。下がった部分を油圧ジャッキで押し上げ、水平になるように保ちます。

修理可能傾斜:約10cm
修理可能基礎:ベタ基礎、布基礎
費用(万円):200~300万
工期(週間):2~3週間
修理後強度:強度低。沈下しきっていない土地、液状化が再発すると再沈下の可能性があります。

(2)硬質ウレタン注入法

硬質ウレタン注入法は、ウレタン樹脂に溶剤を数種類混ぜることで膨張する現象を利用した家の傾きを修理する方法の一つです。

基礎下に穴をあけ注入するシンプルな工法で、騒音やほこりも出にくいのが特徴になっています。

修理可能傾斜:約5cm
修理可能基礎:ベタ基礎
費用(万円):350~600万
工期(週間):1~3週間
修理後強度:強度低。修理後の液状化やシロアリ被害によって再沈下の可能性があります。

(3)グラウト注入工法

グラウト注入工法は、地盤にできた空洞や隙間を埋める方法です。

埋めるものにはセメント系やガラス系、合成樹脂などが用いられ、いずれも流動体で充填し固める方法です。

修理可能傾斜:約5cm
修理可能基礎:ベタ基礎
費用(万円):300~600万
工期(週間):1~2週間
修理後強度:強度中。地中に流し込むので、流したもの自体がまれに沈む可能性があります。

(4)耐圧盤工法

耐圧盤工法は、プッシュアップ工法と少し似ています。

油圧ジャッキで基礎下から支え、さらに家の重さをジャッキがしっかり支えられるように、ジャッキ下に耐圧盤が敷かれます。

修理可能傾斜:条件なし
修理可能基礎:ベタ基礎、布基礎
費用(万円):500~700万
工期(週間):2~5週間
修理後強度:強度中。耐圧盤は支持層まで到達することが好ましい。

(5)アンダーピニング工法

アンダーピニング工法は、基礎を新たに作り直す方法です。

地盤掘削して強い地盤まで杭を打ちなおすことで、家の傾きを修理し永年安定を目指します。

修理可能傾斜:条件なし
修理可能基礎:ベタ基礎、布基礎
費用(万円):600~1,000
工期(ヵ月):1~2ヵ月
修理後強度:強度強め。地盤の固い場所まで鋼管を到達させるので、再度地盤がゆるんでも安心。

さいごに

安心して生活していく上で、家の傾きは決して見逃すことのできない症状であることは言うまでもありません。

家の傾きを感じたら、自分でできる方法で傾きを調べ、不安な値がでてしまった場合は専門業者に相談しましょう。

体調の良し悪しや傾きによる違和感を覚えるなどの影響が出ないうちに、早めの相談をおすすめします。